80年代はじめ、小学生のとき、北海道の北東の小さな町に住んでいました。
冬になると、戸外は氷点下15度、20度。冷えすぎて雪から水分は抜け、ナノレベルかというほどの白い雪煙がもうもう。
粉雪すぎて、雪だるまもかまくらもうまく作れないので、ビニール袋に粉雪を入れて、「奥さん、上物の白い粉だぜ」とやったら、母にバンバンにしばかれました。
いじけて、ガンガンに焚かれた石油ストーブにしがみついていたら、クラスメートの「しゅうちゃん」のお父さんが、ときどき遊びに連れ出してくれました。
「雪靴で外をジョギングしよう」という道産子的レジャーはやんわりお断りしましたが、車で市営図書館に連れていってくれるのは、ときめきました。
雪汁がぽたぽた垂れる、その図書館で、「これは、人気の漫画みたいだね」とお父さんが、ふと棚を指さしたのが、『小さな恋のものがたり』。
後年、そこんちの嫁になるとは思う筈もなく、
「ほおー、都会のお兄さんお姉さんのラブコメは、とんちが利いておもしろいな」と読みふけりました。
白い粉が載っていた漫画(ゴミ捨て場にあった某成年誌)と違って母もこの可愛い漫画には文句を言わず。文化祭、銀座de映画、公園デート、あんみつ女子会、東京へとほのかな憧れが芽生えていきました。
それから35年、めっきり交流の途絶えていたしゅうちゃんは、いつしか長野県の安曇野に移り住み、5人の子を生み育てながら、公営ホールでばりばり働いていました。
そして、SNSのおかげで互いの消息がわかるようになったある日、
「職場の上司が、東京の展示会でチッチとサリーに再会しました。よかったら、安曇野でも、展覧会を開きませんか?」と声をかけてくれました。
もちろん快諾です。だって「しゅうちゃん」親子がいなかったら、自分は今ここにいないかもしれません。ご縁って、こんなふうにお返しするようにできているのかな。
そういうわけで、長野県ではじめて、みつはしちかこ展示会を開かせて戴くことになりました。
年号が変わる5月1日~ 昭和の世界とみどり豊かな信州へようこそ🕊️
1980年代、みつはしが安曇野を旅し、雄壮な佇まいに魅せられて描いたアルプスや高原の原画も、初公開します。
奇妙なことですが、みつはしの絵画が、安曇野に里帰りするような、不思議な感覚もあります。
おまけ。
おととし、30数年ぶりに再会した北海道の友人達と。かおが小学生。
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