イギリス旅行の大きな目的の一つは、書店や出版社を訪問して回ることでした。
後者はアポ&通訳を手配できず断念、書店については詳しい人に予習していきました・・
1797年創業の老舗本屋ハチャーズ、アート系ブックセラー・マグマ、他ナショナルチェーン店・・・
数店舗回って思ったのは、日本の書店や出版界をほふく前身するための叡智は・・という意味では、(私には)ほぼノーヒントかも。
まず、イギリスの大型書店では雑誌やNEWSペーパーが購入できないことが多い。ハードカバー専門なのですね。雑誌はキオスク的なスタンドで買うもので、逆にスタンドではふつう単行本は置いていない。
法令があるわけでないが雑誌と書籍は流通&販売制度が事なり、大型書店にとって雑誌をあつかうことはビジネスとして旨みがないようです。
とくに店舗の家賃がばか高い都市の大型書店にとって、売れる回転が速くても粗利が薄い雑誌のは、コスパが悪すぎるらしい。
と、いうことも含めて、日本の書店の機能や構成とは大きく異なるのでした。
「十代向け」「詩」「歴史」…とにかく棚のゾーニングがきっちりされていて、図書館のよう。整然とした大型店ではリコメンドカードやPOPなどの販促文化すらない、
いえ、あるのだけどペーパークラフト「アート」的なものが多く日本の「ヴィレバン」的な・・・文字販促とかは殆どない。
ゾーニングしきった棚のレイアウト、店内装飾の美しいことといったら、こりゃあ美術館か、サロンか。
そんなサロンを平日昼間に訪れる客はビジネスマンやOL風は少なく、裕福知的階級(っぽい)中高年ミスターや有閑ミセス。一人あたりの店内滞在時間が長い。
そして彼らがためつすがめつする本の装丁の美しさ。デザインに手間暇がかかっているなあ・・これは装丁やデザイン文化が~うんぬんというより、本が「ギフト」「美術品」である側面が強いのかなあと思いました。
そういえば、こちらの人たちは節目に節目に本を贈り合うという日本には少ない習慣があるのでしたっけ。
イギリスでも本(紙本)の売れ行きに憂慮している人々もいる、一方、電子書籍の伸びに期待する、これは万国共通のはずですが、
紙本と電子書籍とではパッケージも目的も、売る客層も大きくちがうと云う。こんなところでもクラス分け社会なのだよね。
地下鉄やバスに乗れば、たくさんの人が出退勤時に新聞を広げていますが、それも生活階層によってゴシップからエコノミー、カルチャー紙まできっちり読み分かれている(服装と紙種と乗降駅とが合致する)感じ。
日経もコミックもごった煮で読むわが島国の人とは違うのだなあ。
「OTAKU」が集うコミックショップを何店か覗くと、日本の「MANGA」の売れ筋がこの国でウケるわけではない とも実感します。
こちらのコミックストアでは、マルチ漫画アーティストの松本正彦さんの展示会が催されていました。切り絵とか、確かに好まれそう。代々木上原で会社と画廊を構える松本さんの息子さんがプレゼンをされての開催のようです、
うちのみつはしちかこさんも、イギリスやフランスでは受けるでしょうね、とこれまでいろんな方に言われ、うんうんそうかなと思っていたけれど、「違う」な。
主人公・チッチのゴマのような目、らっきょのような頬に音符のような足、
小さく何事かつぶやいて、憂いて喜んで、自然と戯れながら・・・彼女はスルスルと日本女子達のポケットに入ってきますが、
では、この石文化の国で通用するかなー、ここでは完全に「アートデザイン化」されないとイギリス女子のポケットには入ってゆけないだろうなと。
日本で親子孫、三代に渡って愛され続ける「普遍の恋の物語」(50年間の売り文句)は、世界の「普遍」じゃない と肌で感じました。これは今まで、アジアの国々では感じたことがなかったです。来てみてよかったです。
専門書店らも、きっちりゾーニングされていておもしろいのですが、イギリスは魔法の本場(?)ということでオカルト書店も冷やかす。
地下フロアで怪しいワークショップを開催しているこちらブックセラーは、夕暮れ時になると、ビッとしたビジネスマンやOL風が入ってきて『ナントカ白魔術』など購入していきます。
この国、やっぱりちょっと怖いな。
伝統としては紀元前5000クラスの石柱遺跡が残っており、それは、祭祀場か墓場か癒し場か宇宙交信場かと、国の最先端機関が本気で研究しておられるわけで、
そういう本を手に取る、Mr.ケビン(仮)
(推定29歳、マンチェスター大学出身・マーケティング専攻、ヘルス関連商品を扱うグローバルカンパニーのプロダクトマネジャー/全部妄想ですが)
みたいなシュッとした黒スーツイケメン君がつづけて『ケルトの妖精たち』を手に取っているのを見ると、やっぱりこの国怖い・・・・・<以下同>。
そういう光景を見ておびえている日本人が珍しかったのか。店の看板犬がしつこくタックルしてくるので、魔術をかけて手なずけました(笑)。
私の書店研究はそこで注意が切れましたが、日本の書店は、その「機能の面白さ」では世界で類を見ない気がしました。
まったく尻切れトンボですがイギリス書店についての感想をおわります。
(おまけ)
こちらは、切ない恋愛を書かせたら英国随一(勝手に言っていますが)ゴールズワジーさんが青年期を過ごした下宿。
最近はまっているヴァージニア・ウルフさんと、時をたがえて偶然バーナード・ショウさんも住んでいたというお宅。英国版・文豪のトキワ荘かな?
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