田村セツコさんの『おちゃめな老後』がすばらしかった。
1960年代から、雑誌や単行本やお菓子のパッケージに登場したこの絵・・・昭和っ子にはおなじみ、ですね。
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作家・大石蘭ちゃんが尊敬する巨匠イラストレーターさんということで「ああ懐かしいお名前だ」、と思っていたのですけど、先日みつはしちかこさん宅で、新刊エッセイを見つけました。
お友達だったのですね。そうか73歳と76歳、同年代同業者だものね。
本の内容はとても素敵で、ちかこさん、付箋をびっしり貼っていました。
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今年76歳になるセツコさんの、工夫にみちた毎日。おちゃめで前向きな生き方、かわゆく歳をとるためのレシピが詰まっています。
病気の老母と老妹さんを同時に介護×6年間という、W老老介護のくだりは、想像するだにソーゼツ、なのですが・・・
介護は「みんながつらいつらいと言うから、逆にやってみたいと思った」。
濡れたおしめを見たら「うわあ生きてる証拠ね」、うんちが詰まってたらほじってあげて、「うわあ腸が動いてる!」。
セツコ先生・・・(゚゚)
気持ちが折れかけても、日々のちっちゃな気分転換で立て直すミラクル。
「夜食を作りながらのほんのちょびっとのワインだったり、ちょっと用事を済ませてるために電車やバスに乗ること。そんなひと時がすばらしい」
「電車ってまるでガラス張りのお部屋って思いませんか? 乗っているだけで、風景が次々と変わっていくのがまるで楽園」
「バス停から家までの帰り道、木の枝の間に夜空の星が見えて、まるで木に星が咲いているみたい」
そんなセツコ祝詞を読むうちに、おや不思議、私のまわりの世界もキラキラしてくるわ。
そういえば、
「どしゃぶりの雨の中でも、道ばたの草花から草花へ目を留めて歩けば、そこはお花畑」という、起業家・鶴岡秀子さんのことを「なんとおめでたい・・」と感心したことがありました。ホテル計画がどんなに座礁しても絶対にこの方はめげないと思いますが、
どんなどしゃぶりでも、その雨礫のひとつの中に光を見つける人って、いるんですね。
だから76歳の今もこんなにかわいくてお若いのだな。これは読むサプリです。
そうそう、
下北沢の古アパートをパリのアパルトマンみたいに見立てて暮らした森茉莉(森鴎外のお嬢さん)のことにも触れられていた。・・・いい匂いの石けん、洒落た缶カラの収集・・・そういう「貧乏耽美」な感じがいやで、十年前は読みたくありませんでした。
でも、今ならやっとわかる。もう一度読んでみようと思います。美しい「見なし」で生きていた、美しい先輩たち。
先のヘルマン・ヘッセのことばも本書のなかで教えられました。
なんだか、ぜんぶ読み終わったら涙がでましたよ。
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