文章の黒オビをめざす人には経典

丸谷才一センセイが亡くなって、著書を読み返しています。

エッセイスト小説家文芸評論家翻訳家…七色の肩書があり、一体何屋さんですかの多才ぶりでしたが、私にとっては文章読本の第一級バイブルを著した殿堂おじいちゃん。

世の作家さん達に「マストな文章読本は?」と聞けば、4人に1人はこれを指さすのではないでしょうか。

文章の茶オビ・黒オビをめざす人には必携書だと思います。

どうすればよい文章が書けるか・・
→個々人がシンパシーを感じる名文から学ぶしかない
→いま日本で使われている言葉は、新語も造語も含め、すべて過去から伝わったものor伝統のアレンジ
→現在の文体=すべての口語体を作ったのは小説家
文芸作品などの名文を読む以外、いまこの日本で文章が上達する方法はない

という文章上達法のほんとうすぎることが、これでもかと論理的に書かれた本です。

志賀直哉 世阿弥 石川淳 佐藤春夫 斎藤緑雨 酒井抱一 荻生徂徠 田岡嶺雲 横井也有 柳宗元 鴨長明 永井荷風 尾崎一雄 旧・新憲法 林達夫 幸徳秋水 藤原定家 新井白石 伊勢物語 古今和歌集 平家物語 本居宣長 折口信夫 羽鳥千尋 谷崎潤一郎 田村隆一 内田百閒 川端康成 森鴎外 芥川比呂志 紫式部 吉田健一 中里恒子 宇野千代 大内兵衛 吉行淳之介 泉鏡花 堀口大學 井伏鱒二 大岡昇平 シェイクスピア 劉禹錫 幸田露伴 坪井忠二 夏目漱石 小沼丹 吉田秀和 竹越与三郎 柳宗悦 藤原基俊 小倉朗 石田幹之助 山口剛 …番外編…日本国憲法

↑厖大な文章が引用され、文章のあらゆる「型」が見られるのも、お得です^^


「ちょっと気取って書け」という章は丸谷ダンディズム&ギャグの真髄だと思います。文体=文章の気取り方のこと、だそうです。
なんでも自虐的に書く私の文章は「気取らないことを、気取ってゐる」という文体の入口かもしれぬ、ほうほう。その気取り方の趣味が悪いのだな、ほうほう
(・・)

と、文章のクセをもつ人には「文章性格診断」にも使えそう^^


丸谷先生、全編ソフトに流せばいいものを、毒舌もおさかん。谷崎先生の『文章讀本』にも毒盛りしています。

谷崎の最大のあやまちは、(略)「文法的に正確なのが、必ずしも名文ではない、だから、文法に囚はれるな」と彼はまづ強調するのだが、不思議なことに彼の言ふ「文法」とは国文法すなはち日本語の文法のことではない。

違うってばー。谷崎は『われわれは伝統的な和語の性格をないがしろにし、欧米文法にこび、日本人らしい曖昧性をカットしたから、本来の美しい和文脈らしいことを書こうとすると「文法」はガンになる』と言いたかったんだようー

と私たち谷崎ファンは憤慨しますが、結局は谷崎のこういう論も、丸谷先生は深めてくれます。

たしかに、和語(文語)を捨てたせいで私たちが失ったものは大きい。メルマガもブログも書き悩んであたりまえです。昔の人は型や様式があったのでもっと流暢に書けたわけです。

$誰でもモテ文章が書ける! 現役コラムニストが贈る 物書き術1000
先日、たくさん羽織をかいました☆

311があって、もっと衣食住面で日本LOVEを見直していこうと思っていましたが、もっと根本的な見直しがありました。

ことばがメルトダウンしている、文章がメルトスルーしている!

こんな、なんちゃって西洋算数思考やメタ英文法が入り混じった文章に、日本の神さんが宿るのか。

このブログは数年前「文章のセンセイぶってお小遣いでも稼ごう」と思って始めましたが、まともに文章や日本語に向かうほど、「文章を教える」ことのチョンボを思い知らされ、恥ずかしくなりました。

和文漢文、口語文芸作品、いくつ読んだかな
(・・)


ビジネス実用文章だから、文芸文章だからと仕分けることではない。
丸谷先生はきっぱり言います。

なるほど、
「一文章を短く書こう」「言葉=情報」「主語と述語をはっきり」「わかりやすく書こう」なんていうSNS文章セオリーを、文化のバックグラウンドもわきまえず人様に伝えることは、原発技術とひきかえに私たちがある生命を失ったように、この愛おしい日本語を無機的なガスに変えてゆくような行為かもしれない。

↑私が言うとどうしても文章本ですが、丸谷レッスンの根底には、とてつもない愛があります^^

文学といふものはもともと言葉の遊びであつて、いや、文学に限らず実用的な文章の場合でさへ…(略)…文章が人間の文化活動の一つである以上、文化が基本的に持つてゐる遊戯性とすつぱり縁を切ることは不可能なのだ。

文章を書く人、みんなきっちり遊びなさいよと^^
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