最近神社で祈りたいことはなくなってしまい(世界平和…?)、かわりに、その神社のご安泰をお祈りして帰ったりします。
絵馬をちらちらとみると、社会的な願い文がすこし減って、家族安泰の願いがたくさん目に入ります。
さて。こちらの記事続きですが。
八丈島で3晩過ごし、明朝はいよいよ奇跡の青ヶ島へ上陸するという夜…
島の名物居酒屋「梁山泊」へ送迎をしてくれたタクシー運さんが、空を見上げて言いました。
「今夜から荒れるね。明日青ヶ島へ渡るって? フェリーは出ないよ。ヘリ? ヘリも無理だろうな…。
ANAも欠航になるから、東京にも帰れないよ。今のうち予定を変えたほうがいいよ」
「そおー……ですか」
こういうことだけ島民のご意見を素直にのめない。
なんなら、念力でヘリを飛ばせないかなと秘かに思いはじめている。酔っぱらいです。
島の薬草「α草」をつまみに飲んだら絶対に二日酔いにならないよ。って島民はおっしゃるので、飲みました。島焼酎。とまらない。12月は3回飲んでいいことにしよう。
あら、確かに、悪酔いしないかも…。
ロマンチックな気分が止まらなくなり、ホテルに帰ったあと、寝袋を借りて、屋上にあがりました。
ボーーーン ボヤーーーージュと海が鳴いている。
轟音の波しぶきが空に上昇し、真冬なのに積乱雲かと見まごう厚い雲の流れに飲み込まれていく、まるで濁り酒のような嵐の前の夜空なのに、オリオン座をはじめ星たちはくっきりみえるのです。
噂どおりの「天然のプラネタリウム」。
数少ない宿泊客の中でも、こんな真冬に星空観賞しているのは私たちだけ。屋上は貸し切りです。
なんだかお月様が丸くてインパクトあるな、と思ったら、
満月。
だったそう。まさかの2020年フィナーレ、離島で満月浴なんて。
しみじみとしていたら、
…ピウー
ピウウウウー
ビーウウウウウーーー
風の音が、なんだか変わってきた。
イビキかいてる家人を叩き起こして、退散しました。
そして翌朝…。
ゴオオオオオオオ、、、
タクシー運ちゃんのおっしゃったことは、当たっていました。
楽しみにしていた、大海原をぐるりと展望できる朝風呂も、
ドオオオオオオン、
ゴオオオオーーーー
海鳴り、空の轟音が恐ろしすぎて、私は湯船で、
ヘンなしゃっくりが出始めました。
たとえヘリが飛んでも、これは、乗りたく、ないかも……
あれほど、青ヶ島上陸を望んでいたのに、乗ったらいかん気がしてきました。
「天候調査中」とのことで、なかなか、就航のアナウンスがサイトに上がらない。
いやこれ、無理だろう。いやこれ、無理だろう。
出発40分前を切って、やっと空港カウンターにて決定されたと思ったら、
「条件つき就航」ですって。
「危険がある場合は、引き返します」と、CAさんが無表情でおっしゃる。
危険な可能性があっても、がんばって飛んでくれるのですね…。
「ま、ヘリは風には強いんじゃない?」
昨日のタクシー運さんの言葉を脳内で噛みしめる。
もう、なにも口に出せぬまま、
どしゃ降りの中、タラップを渡って、私たちは9人乗りのヘリの機内に押し込められました。
10分後。
「うわああ」
機体が浮かび上がった瞬間、私は叫びたいのを我慢し、自分の口を塞ぎました。
だって、浮き方、明らかにおかしい。
風に持って行かれて、かなり、ふら、ふら、ふらしています…
バリバリバリバリ、ドドドドドドド、、
そして耳をつんざくような、この轟音は通常モードなのでしょうか。風当たりが強すぎるのではないでしょうか。
猫を連れてこなくてよかった。
(青ヶ島には、ペット対応できる宿はないとのこと)、
気の小さい動物ならば、ショックで気絶するか、少なくともトラウマになりそうな揺れっぷりと轟音とはげしい振動。
前の座席で、A島在住のご夫婦らしい男女が、顔を見合わせています。
なんで、顔を、見合わせているの?
いつもと、どこか違うの?
てゆうか高度って、こんなに低いものなの?
シケシケの荒れ荒れに荒れている海上の波しぶき、
その白い割れ目に、今にも機体ごと飲みこまれそうな低空飛行
昔からたくさんの人がこの波に飲まれました…。
よせばいいのに、難破シーンを思い出してしまう。
こちらは、1785年に火山大噴火した青ヶ島の住民が、避難先の八丈島の島民の協力を得て、50年後(!)に還島するまでの物語。
途中で、吉村昭の超名作『漂流』の主人公……無人島の土佐の野村長平とクロスするシーンがあるのです。
まさかこの二つの物語がクロスするなんて…。
本好きの醍醐味です。
無人島譚、冒険譚、江戸ものが好きな人には、ぜひおすすめです。
飛行時間20分と聞いておりましたが、大風のせいかかなり時間がかかっている……。?
本のことを考えて気をまぎらわす。
旅立ちの前、
「どうして今どき、船やヘリの一つ二つ、着岸できないのかしらね。21世紀なのにね」。
そう思っていた自分を、海に沈めてやりたいです。
人間の技量ば、こん大自然に、かなうわけなかろうが。
何県出身かわからない、私の中の守護霊が吠える。
そんな荒れ狂う大海原すら、霧でなんにも見えなくなってきました。
前を見た私は、今度こそ「うっ」と声を漏らしてしまいました。
機長と、副機長のコクピットの前、本当に真っ白。
白一色。
無。
色即是空。
「いや、何か、デジタルモニターがあるでしょう。カーナビの、空ナビ版みたいなやつ…」
と思って、のびあがっても、それらしき機器が見当たりません。
ないのですね。
目視なのですね。
きっと心の眼で見るのですね。
プロだから。
ブツブツ言いながら、ふと家人を見ると、恐怖のあまり心を閉ざし、目をつぶっています。
だめだ。私も意識を消そう。これ以上恐怖を感じると、電波妨害になる気がする。
万が一墜落したとしても、意識がないほうが楽やろうし。
やりたいことやってきたから、死んでも、悔いはない。
猫だけ、死後委託しておけばよかったな。
ごちゃごちゃ思いながら目を閉じたら、疲労のせいか、あっさり気絶しました。
「着いたお!!」
家人の声で目を覚ますと、ヘリはうっすらと見える家々の上空に。
家々、学校、工場、畑、走る車、、車、、、
うん………?
「思ったよりも、たくさん家があるね!」
家人はうきうきしています。
「たくさん、っていうか、これ島民の人口(170数名)より多くない……?」
違う。これ、青ヶ島じゃない。
八丈島にUターンしてました。
青ヶ島のヘリポートがどうしても目視できず、まるっと引き返されたそうです。
でも、島の真上まで機長、副機長はがんばってくれたのです。
ありがとう!ありがとう! あんな恐ろしい中を…。
壮大な、大嵐の遊覧飛行は、こうして終了しました。
かくして私達は、青ヶ島に、帰ってきました。
戻ったとたん、カラリと晴れるのは、島のお約束なのでしょう。
こんな環境だから、島民はカラリとした気性で、なんでも助け合うのだそうです。
そんな八丈島に、なんだか引き留められている気がする。
「ためしに、物件巡りをしてみようよ」
居酒屋で作戦会議をしていると、
はす向かいに盛り上がっている青年4人のテーブル。彼らが頼んだ船盛りが、あまりにゴージャスだったので写真に撮らせてもらいました。
後でTwitterを見ていたら、なんと、その日に「移住」したてホヤホヤ青年達のお祝いだったらしい
「移住……」
翌日、不動産巡りを開始した私たち。
最初は不動産サイトを見ながら、空き家を見に行ったのですが、入り組んでいて詳細がわからない。
道端におられる島民に尋ねると、
「そっちより、あっちの空き家のほうがいいよ!」
と、ぐいぐい違う場所に連れていかれました。
あるおじさんは、親切に教えてくれた上、トラックで追いかけてきました。
「これ、あんまりいい土地じゃないよ。海に近すぎて、もろに潮風をかぶる。それより俺が持ってる土地のほうがいいから、見せてやる」
ということで、私達トラックで運ばれていったら、
これ、
どないしよん…🤣
「いくらで売ってあげたら、買える?」って。
プライスレス🤣
あるおじさまは、手入れしてくれるなら、親父の亡き家を、貸してあげるという。
なんだか、島民一人につき、空き物件を一軒もっておられる気がする。
しかしそれら物件は、私には広大すぎる。
せいぜい住居用に1、2部屋あって、施術ができるスペースがちょっとあって、
もしかして、本土からのお客さんを素泊まりさせてあげられる部屋があれば、じゅうぶん。
食べ物は、島の新鮮なものを食べさせてくれる店やスーパーがいくつかあるし、魚釣りも覚えよう、薬草も摘もう。
豊かに生きるためにお金は要らない、そのかわり取り戻すべき本能がある、それを、必要な人に伝える伝書鳩として🕊️
いつか、この美しい八丈島に選んでいただけたらと思いました。
一生ぶんの虹を見れました、と最後にレンタカー屋のおじさんに言ったら、
「あれが、本物の八丈島の虹だよ!」と雨上がりの空を指さしました。
見とれて、写真をとるのを忘れてしまいました。
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