テルちゃんと出会ってから10年以上になる。消えてからは、何年になるかカウントしていない。
折につけ、どうしているかと思っています。2008年記事から再掲載です(旧mixiより抜粋)
◆
(2008年)
先日、思わぬナンパをしてしまいました。
ホームレスのおばちゃまを、地元の駅の階段で。
酔っ払うと、男の子も女の子もすぐお持ち帰りしますが、
ホームレスの方を持ち帰ったのは初めてです。
自分で決めたことですが、自分に不信感があるので、思考を整理してみます。
…なぜそのような行動に出たのか、、、
1、酔っ払っていた・・・・・・・・・・・・・・・・40%
2、不思議な縁をかんじた・・・・・・・・・・・・・30%
3、最近あまりにも忙しく、家&事務所がぐちゃぐちゃで、
お手伝いさんがほしかった・・・・・・・・・・・20%
4、自分がウツで臥せていた時を思い、人事でなかった20%
3、寒すぎる日だったので、危険と思った・・・・・・10%
5、将来、子育てなどで、もっとぐちゃぐちゃになった時、
おばちゃんネットワークを作っておけば安心・・・10%
6、取材として芳しい・・・・・・・・・・・・・・・10%
7、今から善行を積めば、あの世にいった時、
私を救う蜘蛛の糸が増えるにちがいない・・・・・5%
だいたいこのような優先の動機になります。
ぜんぶで145%だけど気にしないで。
20分ほど逡巡したので、泥酔していた私にしては深慮といえる。
しかし、当然かもしれませんが、
「パン(私がさしあげた…)は、有りがたいけれど、何も話したくない」
「人とは接したくない」
…と、最初は、頑なに固辞されました。一緒にいた家人にも、
「ほら、こんな拒絶してらっしゃるんだから無理だって」
「キミは何を考えているのか。気は確かか」
…と、強い牽制をうけたのですが、
「お姉さん、私は、お仕事の話をさせていただきたいんですよ」
と言ったら、うずくまってた彼女が頭をあげたんです。
目深に被っていたニット帽の端をずりあげて。 瞳をみようとしたけれど、瞳はみせてくれませんでした。
そこで、
「こんなオファーをするのは慈善でも何でもなく、 事務所が散らかって、まずい事になっているから、片付けるお仕事をしていただきたいのだ。それを宿泊の報酬とするので 等価交換なのだ。だいたい5000円くらいの仕事をしていただきたい。 条件としては必ず風呂に入ってほしい」
と、しつこく説明したら、 「私の事情を聞かないなら…」と、重い腰をあげてくれたんです。
家人は「ヒー、交渉成立しちゃった…」腰を抜かしていましたが、
酔っていた私に、「ねー、そういえば、あの女性、1ヶ月くらい、ずっと、この駅の階段に座っているねえ」と 「気づき」を与えたのは家人なのです。
そんなわけでお連れして帰ったけれど、誤算がひとつあって、 室内では、匂いってとんでもなく増幅するのですね。
ネコが、匂いをかいで吐いてしまった🐈。そんなことって、あるのね。
なのでネコは隔離しました。
急いで風呂にいれオヤツと上着をさしあげ、おばちゃまの服は洗濯機へ。
迷いましたが、深夜の酔いのことゆえ、めんどくさくなって 自分のパンツもおばちゃまのパンツもイーブンに回してしまいました。
泡の中で彼女のケラチンと私のケラチンがいっしょになり、 他人でなくなっていく気がしました。
彼女は嫌がっていたわりに、ご自分からトウトウと素性を喋りはじめました。
私の母と、同い年生まれだという…。そう聞かされて、肌寒い気分になってしまいました。
当のおばちゃまは、台所の流しをすこし磨いてくれたあと、ソファで爆睡してしまいました。
私も次の日、早朝から撮影のディレクション仕事だったので、 家人に「じゃあ後は監督よろしく願いしますね」 彼女に「後はトイレと風呂そうじをお願いしますね」と、 出かけたんです。
夜、帰ってきたら、 トイレと洗面所が、今まで見たことがないほど 綺麗になってました。 蛍光灯の光を受けてぴかぴか反射していました。
しかし、誤算が一つあって、 おばちゃんはご自分の服を置いていってしまった。 洗濯した服が、乾かなかったのです。
家人が「どうします? また取りにきます?」って聞いたら、 「ハ、ハイ…」って、恥ずかしそうに逃げるように帰ったんですって。
帰るって、どこに…?
そして、私が「あげます」って渡した服も 小さく、きちっと畳んで、すみっこに置いてあったんです。
急に、ものすごく悪い事をしてしまった気がしました。
彼女はもう二度と取りに来ないんじゃないだろうか。 私は、大事な彼女の財産(ふく)を奪ってしまったんじゃないか。
悲しくなって、家人に 「生乾きでもいいから、なんで袋に入れて渡さなかったんだよう、 小さな親切大きなお世話たぁこのことじゃんよー!!」 と悪態をつきました。
家人はほんとうに目を白黒させて 、
「あんたが言い出したことじゃん」
「あんたの頭って、どうなっているの…」と。
そんな珍プレーになってしまいました。
この話をしたお友達からは、 「あなたのような突飛な嫁をもつ旦那は、ほんとうにたいへんだ」
と あたたかい激励を戴きましたが、家人はタオルを差し入れたり、お茶を入れたり けっこうノリノリだった気がします。
しかも、最大に気の利く所業として、私のケータイ番号とテレカを渡してくれました。テレカ! 公衆電話ユーザーですからね。
さて、彼女とはもうこれっきりなのでしょうか。
と、思ったら、3日後に電話がかかってきました。
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