出版おめでとうございます。
私が尊敬する、年上のお友達ムーさん。アラ80にして初エッセイを出版され、お祝い会がありました。…本当はお友達というより「遊びにくるなら、煙草買ってきてね」「イエッサー」 的な関係です…(子分)。
ムーさんは、公家の血を引くほんまものの「いとさん」。
ですが、ただのいとさんではなく、日本のファッションデザイナーの草分けにして、服飾ビジネス界の生き字引きと呼ばれるキャリアWOMANです。
1980年、四十路にして、今後の繊維業界の拠点は中国に移ると睨み、経営している会社をたたみ、身一つ(コネなし語学力なし)で台湾へ出奔。
現地の最大手紡績会社の「社長に会わせて!」と飛び込みで企画書を書いて、みごと企画顧問の地位ゲット。
社員数1万人中、ただ1人の日本人として現地を回遊し、以降は日・中のアパレル有名企業でマーチャンダイザーやマネージャーとして活躍されました。
NHK朝ドラ「カーネーション」のアセアン版か!
…いつか、この大姐をモデルにした何かを書かせていただきたい^^ しかし、私のような寝ぼけた平成中年女の度肝を抜く奔女ぶりはとどまりません。
行く先々の国で老若男女に声をかけ、お友達を作るなんてデフォルト。「言葉の通じない国で自分専用の夕食を作ってもらえる方法」「異国で見つけた気になる人の素性は大使館で追跡」などなど、
これ一般人に使えるかしら?と首をひねりたくなる『地球の歩き方(裏ワザ編)』としても読めます(笑)。
もちろんイッセイ、ケンゾー、カンサイら「DCブランド」黎明期を押さえた、戦後日本ファッション業界史としても読めます。
かつ、「トランジション世田谷」などロハスな地域活動が盛んなご時世にあって、本当のトランジション(移行/移り目/乗り継ぎ)ってこういう意味だよね…。
サンテグジュペリの『星の王子さま』が悟ったあの価値観は、「トランジット」から生まれるのね…と染みるのです。
誰もが、こうした感覚をもてれば、自然に、分け隔てなく、ピースフルな考え方ができるんだろうと。
そんなムーさんの出版お祝い会、集まった方々は個性的でした。戦争をリアルで知っている方…価値観が一夜にしてひっくり返った時代を体験した方がいると、話が平面的になりません。
青い絵画のように美しかった台湾最南端の海に、ゲンパツが建っちゃった話とか、
一般人アパートのエレベーターにまで公○が目を光らせていた戒厳令時代(80年代!)とか、
中国ではいまだに情報統制がはなはだしく、来日した若者に天安門事件のビデオを見せたら目を剥いていたとか、
もっとアジアの良質の素材を、和装などにも偏見なく受け入れれば日本服飾界全体のクオリティが上がるのにとか、
---大姐たちの話を聞いていると、日本が世界に誇れるもの(国益)は、こんなにいっぱいあるのになーと思えます。
◆
現在、「このままでは中国や韓国にどんどん負ける負ける負ける負ける負ける」と焦りでいっぱいのニッポン。
政府はもっかアフリカ市場開拓に血眼になっておられますが、先日そんなニュース番組の背景に、あの悪名高き「殺虫剤入りの蚊帳」が映っていてゾーッとしました。
TPP参加への旗をふっている親分企業が↑作っています。
あんな猛毒入りの蚊帳をアフリカに売りつけて、アフリカっ子達の健康をどうするのでしょう。そもそも殺虫剤が要らないのが蚊帳じゃないの。
殺虫剤や、殺虫剤をかけても死なない遺伝子組み換え作物の商売(ハブとマングースか!)、
そうしたものがTPPに参加したい人々の動機の、かなりのウェイトを占めています。
本書から引用すれば(ムーさんは全く政治的意図では書いておられませんが)、「すばらしい才能をもつデザイナーを輩出し(ながらも、日本が)欧米のブランドの最大の市場に甘んじているのは、国の根幹を握る層(主に男性)がファッションやアートに理解がないせいであろう」…
そう、アートに時間など割けるかと思う日本のオジサン達は、原発とか殺虫剤入り蚊帳とかを、いたいけな途上国に売りつけるのに御執心なのでした。
◆
「日本はアジアの一員という意識はなく、日本は特別だエリートだという思い込みがある」という、どなたか大姐様の発言もありました。
ぶっちゃけ…中国は、しばしの眠りから覚めて元々歴史上そうであった大国ポジションに返り咲くだけなんじゃないの?
日本が同じ土俵で、負けまい負けまいと躍起になるほど、よけい負けるんじゃないの。
ムーちゃんの予見どおり、服飾生産拠点、マーケットになったどころか、あらゆる産業の熱気蠢く中国。これから日本が渡りあうには、途上国の公共事業など奪い合ってる場合なのかしら。
---ということを、この知的な鳥の目をもつ女性の自伝エッセイを読んで、しみじみ感じさせられるのです。
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